
(2)公共交通
1)鉄道
鉄道はケープタウン都市圏における通勤輸送等に比較的大きい役割を発揮しており、主要幹線では道路交通に匹敵する輸送量を維持してきている。バス交通と異なり、全体としての輸送量は過去ほぼ一定した量を保っており(年間約147百万人)都市圏の交通体系の一部を担っている。
近年の輸送状況における大きな変化として1等旅客数の減少と3等旅客数の増加が顕著となっている。ケープ都市圏での郊外人口の増加の故に3等旅客数の増加は頷ける現象であるが、1等旅客数の減少については自動車及びコンビタクシヘのシフトと考えられるものの原因は一様でない。
鉄道利用の減少については、多くの要素が考えられるが単純には鉄道の魅力が低下して来ている事が指摘されている。まず利便性に関しては道路交通混雑による道路走行速度の低下にも関わらず、郊外から都心地区までの朝ピークの所要時間を比較すると、乗車時間のみでも自動車利用の方が若干早くアクセス、待ち時間を含めると鉄道利用がかなり不利な結果になると報告されている。
(HAIDEN 1989)
次に利便性以外の要素として安全性、サービス水準についてみると現状において鉄道の持つイメージはかなり問題がある。一例として駅周辺の土地利用を見ると、乱雑に放置された空き地、老朽建物、廃棄物置き場、工場等、の場合が多く鉄道利用を妨げる要因となっている。
また多くの駅は住宅地区の間に配置されており、幹線道路へのアクセス性が極めて悪く駅までのアクセス道路として地区内街路しか利用できないケースが多く、そのためバス等の大型車両の進入ができない問題がある。それらの道路の中には未舗装かつ不潔に放置されたままの管理外の道も多い。
周辺都市機能との結びつきを失った鉄道機能がもたらす更に深刻な問題として鉄道施設の中での犯罪発生頻度の増加が指摘される。現在メトロ鉄道管内で起き警察に報告された犯罪件数は年間850ほどに上っており、報告に至らなかったものも含むと相当深刻な状況にあると言わざるを得ない。
前ページ 目次へ 次ページ
|

|